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第31話 ミルクココア

last update Fecha de publicación: 2026-08-05 20:00:00

雨が上がるまで、もう少し時間がかかりそうだった。

「温かいものを」と柊さんが立ち上がって、キッチンへ向かった。

ソファに一人で座ったまま、雨音が少しずつ遠くなっていくのを聞いていた。

私は、今日のことを順番に思い返した。

古本屋で偶然会って、路地を並んで歩いて、カフェで「柊さん」と呼んだ。

この部屋に来て、書棚の本に手書きの名前を見つけて、色褪せた写真の前に立った。母親のことを聞いて、少しだけ間があった。

まさかこんな一日になるなんて、朝には思っていなかった。

しばらくして、柊さんが戻ってきた。

「どうぞ」

マグカップを差し出された。受け取った瞬間、湯気の甘い香りに気づいた。

「……ミルクですか?」

「ミルクココアです。……何か不満でも?」

柊さんは少しだけぶっきらぼうに、だけど私の反応を窺うように視線を泳がせた。その見たことのない顔に、胸の奥で何かがほどけた気がした。

私はマグカップを両手で包んだ。

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  • 身代わりお見合いの花嫁〜冷徹社長は偽りの愛を見抜いている〜   第3話 見透かされる嘘

    それから、当たり障りのない会話が続いた。趣味のこと、好きな食べ物のこと。プロフィール帳に書くような、差し障りのない質問と回答。姉から叩き込まれた設定を頭の中で繰り返しながら、ボロが出ないようになんとか答え続けた。ところが──。「お仕事は、普段何をされているんですか?」ひどく自然に投げかけられたその質問に、張り詰めていた頭が一瞬でフリーズし、口が勝手に動いた。「広告の……プランニングを──」しまった。姉は、ファッションモデルのはずだ。「……っ、いえ。今はモデルの仕事を少しお休みしていて、その……裏方のお手伝いのようなことを」取り繕うように、慌てて言い直す。顔に熱が集まるのを感

  • 身代わりお見合いの花嫁〜冷徹社長は偽りの愛を見抜いている〜   第2話 偽物の名前

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